強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました




 その日は頭痛と秋文の事に悩まされて、あっという間に時間が過ぎていった。
 夕飯は、さっぱりした物が食べたいと秋文からリクエストを貰ったので、冷しゃぶサラダとスープを作って秋文が遠征から帰ってくるのを待つことにした。

 試合の中継を見ていたが、秋文は本調子ではないのかミスが多かったようで、前半だけの出場だった。そして、秋文が所属するチームは負けてしまっていた。
 家に来た時に、彼はショックを受けていないか。それさえも心配になってしまう。


 だが、それは杞憂に終わった。



 「予定より早く帰ってこれたのに、連絡もしなくて悪かった。」
 「ううん。早く来てくれるの嬉しいから………その、お疲れ様。」



 千春は、どう励ましたらいいのかわからなく、きごちなく微笑んで秋文を迎えてしまった。
 すると、秋文は「試合見てたんだな。」と、笑っていた。


 「おまえにカッコ悪い姿見られたのは恥ずかしいけど……試合はたくさんしてるから、負けることも多いんだ。毎回凹んでられないからな。切り替えて、次にどう動くか考えるしかないんだ。」
 「そうなんだ………すごい世界だね。」
 「俺もプロサッカーやって長いからな。」

 
 彼は、沢山の試合を積み重ねてきたからこそ、そうやって強い気持ちでいられるのだろう。きっと、プロの世界で生きていくには相当な努力が必要なはずだ。秋文は、その世界で生きている。それを思うと、千春は今まで以上に、彼の生き方がかっこいいと感じた。


 「今日の試合、録画してるけど見る?」
 「……いいのか?せっかくおまえの家に来たのに。」
 「気になって見直したい部分とかあるんでしょ?私も一緒に見たいから。見よう。」
 「………あぁ。ありがとう、千春。」
 「うん!」



 夕食を温め直して、リビングに行くと、画面を真剣な顔で見つめる秋文の顔があった。
 そして、気になる所があると何度も戻して見直していた。
 千春はテーブルに食事を並べ、秋文の隣に座りながら一緒にテレビを見つめた。


 「秋文、食べながら見よう。お腹空いてるでしょ?」
 「あぁ………。」


 秋文は、返事をしてから箸を取り「いただきます。」と言ってから、食べながらテレビを見つめた。
 さきほどから、同じ所を繰り返し見ていることに千春は気づいた。


 「ここが気になるの?」
 「あぁ……相手のMFが俺よりも先輩なんだけど、視野が広いんだ。俺が見逃してしまうところを攻めてくるんだ。悔しいけど、上手い。」
 「そんなにすごいプレイなんだね。」
 「気づけるように気付けないんだ。攻め方もいろんな方法を知ってるし、今日は惨敗だよ。」
 

 負けたはずなのに、清々しく笑う秋文。
 きっと、自分の考えないような戦略を見れた事が嬉しいのだろう。
 秋文のキラキラとした瞳を見つめる。彼が本当にサッカーが好きなのだと伝わってきた。

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