強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
俺だったら、お前のことを悲しませない。
そう言ってやりたい、彼女を抱き締め返したい。
けれども、それが出来なかった。
「……お前が眠るまで、いてやるから。」
「……うん。」
秋文の言葉を聞くと、千春は安心したのかすぐにベットに戻って瞳を閉じた。
秋文が頭を撫でてやると、気持ち良さそうに微笑み、そして、すぐに静かな寝息が聞こえ始めた。
穏やかな寝顔を見ていると、秋文は愛しさが募るばかりだった。
自分がどうして彼女をこんなにも好きなのか、理由はいろいろあるが、ここまで夢中になってしまうのか、秋文は自分でもわからなかった。
けれども、かれこれ10年以上の片思いだ。
理由なんていらないのかもしれない。
秋文は、壊れ物を扱うように千春の顔をゆっくりと撫でる。
そして、顔を近づけて少し迷いながらも彼女の額に口づけを落とした。
「………ごめん、千春。」
消えそうな声でそう呟くと、秋文は静かに立ち上がり千春の部屋から出ていった。
秘密の口づけも、切ない言葉も、知っているのは秋文だけだった。