強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
静哉と別れた後、千春はすぐに家には帰らなかった。向かったのは、もちろん秋文の家だった。
突然会いに行った事に、秋文は驚いた様子だったけど、すぐに喜んで家にあげてくれた。
「どうしたんだ?会えないって話しだっただろ?」
「………ごめんなさい、その、秋文に会いたくなったから。」
「夜中に一人で歩くのは危ないから、今度から連絡してくれよ?」
「うん……。」
部屋に入ってすぐに秋文に抱き締められたまま、そんな会話を交わす。
緊張した気持ちでこの部屋に来たのに、秋文の体温と匂いを感じるだけで安心して力が抜けてしまう。
秋文に会いに来たのは、スペインへの移籍の話をするつもりではなかった。
彼の気持ちを少しでも知りたかったのだ。
それに、彼が遠くに感じてしまって寂しくなってしまったのも理由の1つだった。
「秋文、今日泊まってもいい?」
「……あぁ。もちろんだ。どうしたんだ、そんなに甘えて。珍しいな。」
「そうかな……。秋文に会いたくて、そうなったのかも。」
千春は、彼にキスをせがむように彼の顔に近づける。すると、秋文は嬉しそうに笑い、優しくキスを落としてくれる。
久しぶりの彼の家と、彼の感触に千春はここが玄関だというのを忘れて、キスを求め続けた。
彼が与えてくれる熱には、何か不思議なものがある。もっと彼が欲しくなって疼いてしまう。いつもは我慢しているのに、今日は何故だか違った。
「秋文………お風呂入りたい。」
「あぁ。一緒に入るか?」
「うん。入りたい………。」
いつもならば「恥ずかしいから。」と断る千春に、秋文が冗談で言った言葉だったが、千春が受け入れたのに、秋文は驚いた様子だった。
「ダメだった?」
「いや………そんな事ないけど。今日のお前、いつもと違いすぎるから。」
「……私だって、そんな気分になる事あるよ。」
「………あぁ。ったく、おまえには勝てないよ、本当に。」
秋文も我慢が出来なくなったのか、そのまままた強く抱き締められ、食べるように唇を奪われていく。
こうやって、彼に抱き締められているだけで安心するし、不安な事を忘れられる。
その熱と快楽に溺れていれば、幸せなのだ。
それだけではダメだとわかっていても、今だけは溺れていたいと、千春は秋文の与える優しさと気持ちよさを求めて目を瞑った。