強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
千春は、手の中の鍵を見つめて戸惑った顔をしていたのだ。目は泳ぎ、何と返事をすればいいのか迷っているのか、口をうっすら開けて固まっていた。
その様子を見て、秋文も焦ってしまう。
まだ鍵は早すぎたのだろうか。それとも、部屋に来て料理や洗濯などの家事を手伝って欲しいと思われてしまったのか。
彼女が何故喜んでくれないのかわからないまま、秋文は少し早口で焦りを隠すように千春に声を掛けた。
「鍵はまだ早すぎたか?別に、家事をしてくれとかいってる訳じゃないから。好きなときにまて来てくれればいいから。………もし、鍵がいやなら………。」
「ご、ごめんなさい。驚きすぎて………とっても嬉しいよ。ありがとう、秋文。」
「でも、おまえ……。」
全然笑えてないぞ。
彼女に伝えたくても、必死に笑顔を作っている千春に言えるはずがなかった。
その後は普段の千春に戻っていた。
「自分の家の鍵と秋文の家の鍵を一緒のキーホルダーに入れられるなんて嬉しい。」とか、「秋文がいない部屋に入るのドキドキするなー。」とか、そんな事を笑って話している。先程よりは普通になったけれど、まだどことなくぎこちない表情だった。
秋文も普通通り返事をしていたが、内心では心が荒れていた。
千春が困っている姿を見て、酷くショックを受けていたのだ。
彼女は何故そんな顔を見せたのか。
いくら考えても、理解することは出来なかった。