分け合う体温
それ以来、私は理人を無視した。

「ねえ、由乃。」

理人が話しかけてきても、何も答えなかった。


「どうしたの?由乃は。」

旅行から帰って来たお母さんも、不思議がっていた。

「喧嘩でもしたの?」

「してない。」

「してないのなら、理人を無視する意味ないでしょ。」

仲が良かった姉弟が、口を利かないなんて、お母さんにとっても、心苦しいとは思うけれど。


私は、許せなかった。

初めては、好きな人だって、決めていたのに。

勝手に、奪うなんて。

しかも、弟のくせに。

いつから?

いつから、私をそんな目で見ていた?


毎晩、ベッドに入ると、あの夜の事を思い出す。

あの時の理人、とても切なそうな顔をしていた。

何度も何度も、私の名前を呼んで。
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