分け合う体温
今日の理人は、好物の焼肉だったからか、次から次へと、箸を口に運んでいた。

食べっぷりが良くて、見ているだけで、ほんわかしてくる。

「由乃。沢山食べないと、理人に全部食われてしまうぞ。」

お父さんが言った。

「ほらほら、焼けたわよ。」

お母さんが焼けたお肉を、私に分けてくれる。

「ありがとう。」


どこにでもある、家族団欒。

両親は、私と理人が愛し合っている事を、知る由もない。

どこか、嘘が混ざっている家族。

でも、その嘘を作っているのは、誰でもない私達なのだ。


ああ、言ってしまいたい。

私と理人は、恋人同士なんだって。

そして、喚き散らして、切り裂くように怒ってほしい。


いつか理人が、『俺を蔑め!変態だって罵れ!』って言っていたけれど、今ならその気持ちが分かる。
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