分け合う体温
仕方がない。

普通に付き合っていたって、進学の時に別れるカップルは、たくさんいるんだから。

「だからさ、由乃。」

「うん。」


高校時代の鮮烈な思い出。

この恋は、それでもいいと思った。


「俺が大学入ってしばらくしたら、二人で暮らそうか。」

耳を疑う言葉だった。

「一緒に……暮らす?」

「俺、なるべくこっちに近い場所に、家を借りるから。」

私は、黙ってしまった。

突然の事で、言葉が出なかった。

「……ダメ?」

「ううん。」

断る理由なんて、何一つない。


「ずっと、一緒だね。」

「当たり前だろ。」

理人はそう言って、私のおでこにデコピンをした。

「痛いな、もう。」

「なに、別れると思った?」

デコピンされたおでこを摩って、そんな予感がした自分を責めた。
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