裏側クリスマス
*
「お疲れ様でしたー」
「お疲れー」
まだ夜の8時。
それでも私は、お腹空いたし、疲れたし。寒いし。
なのに、まだ、駅前広場でサンタの恰好をしてティッシュを配ってる人もいる。
…見るからに寒そうだ。…というか、見てるだけで寒い。
「増田さん?どうしたの?」
「…栗栖くんこそ、どうしたの?いつも、帰るのこっち方向じゃないじゃん」
いつもはケーキ屋の前で、反対方向に向かって歩いて(時々走って)行くのに。
…何があった、栗栖くん。
「ちょっと、ね」
栗栖くんは困ったように笑って、私から目を逸らして誤魔化したので、私はさらに疑問に思ったけど、無理に聞き出すのもよくないから、黙っておいた。
どこかよくわからないところを見ている栗栖くんの横顔が、いつのまにか私の隣に来ていて、私の視界のど真ん中に来たので、私は慌てて前を向いた。
「イ、イルミネーション、観るとか?」
「んー…増田さんは観るの?イルミネーション」
「まぁ、今日、家に帰っても誰もいないからね~。観てくのも悪くないかなって」
私はバイト、お兄ちゃんは彼女とホテル(可愛い彼女さんだった)、お父さんとお母さんは、クリスマスデート(泊まりがけ)らしいし。ラブラブ夫婦め。
…大体、あんたたちキリスト教徒でもなかろう…と、言ってやりたいところだけど、街行く人はみんな楽しそうだし、街だってキラキラしてるし…悪くないと思う。キリストさん、生まれてきてくれてありがとうございます。