裏側クリスマス
「…寂しくないわけじゃないじゃん、それ」
「別に」
「寂しいことに慣れたんでしょ。本当は寂しいってことでしょ」
「…そんなことないもん」
寂しい…なんて言ったところで、どうにもならないし。
最初からなかったことにしちゃえばいい。
「言いなよ、寂しいって」
栗栖くんは、そんな私の気持ちもお見通しなようだ。
…さすが、エスパー栗栖くん。
「寂しくないもん」
「…『もん』っていう語尾が可愛すぎる問題は置いといて。言ったじゃん、俺は増田さんのことについてならエスパーなんだって」
「…でも、」
「大丈夫だよ。家族もいるし、何も変なことはしないから。…ほんと言うと、したいけど」
…なんで栗栖くんはエスパーなんだろう。
私が隠してて、私でも忘れてた気持ち、なんで栗栖くんは気づいちゃうんだろう。
「…わかった。…寂しいから、行く」
「うん。やった。おいで」
「うん」
栗栖くんはあまりにも嬉しそうに笑うから、「行く」って言ってよかったなって思った。…ちょっとだけ。
家に帰ってもどうせ誰もいないし、多分みんな、明日のお昼とか夕方まで帰ってこないもん。
それが当たり前なのに、寂しいなんて言ってられない。
なのになんで、この人は本当に…。
私が「寂しい」って言って、こんなにも喜ぶんだろう。
絶対、そんなワガママ言っちゃいけないと思ってたのに。