今夜、色のない君と。
駅から徒歩で10分ほど行くと、その本屋が見えてくる。
静かな大通りを抜けたところにある細い小道。
今はもう使われてない八百屋、洋服屋、肉屋、銭湯………。
どれもが空っぽの建物が建ち並ぶ道を、一番奥まで歩いていくと、
ひっそりと佇む一つの建物がある。
それこそが僕行きつけの本屋、“文聖堂”だ。
外観は廃墟同然。
灰色で、穴は空いてないけど至る所にヒビが入ってて、今にも崩れちゃうんじゃないかってぐらいに壁はボロい。
端の四つ角に小鳥の彫刻がほどこされた茶色い扉は砂まみれ。
その斜め手前には小さいテラスみたいな場所があって、よくカフェとかで見る青っぽい緑色っぽい粘土のような色をした、
鉄製のオシャレな椅子と一人用のミニテーブルが、やっぱり砂と埃まみれになっている。
一応窓はあるけど、ヒビ割れや完全に破損した窓が、ガムテープやダンボールで荒く修理されている。
そしていつもカーテンがかかってるので中の様子はこれっぽっちもわからない。