今夜、色のない君と。
「たしかこの辺に………おっ、あったあった。これだよ。その小説」
僕は秋野さんからそれを受け取り、表紙を見た。
画家が住んでいるような部屋の絵と、タイトルが書かれている。
「“今夜、色のない君と”……」
「タイトルからでもわかるでしょ。絵からでてきた男のコは花夜ちゃんみたいに色がなかったんだよ」
秋野さんは言った。
僕はその本の裏表紙や、中身をパラパラめくったりして、最後に背表紙を見た。
「……え…?」
あれ、この作者……。
僕はさっき座ってた椅子まで戻り、横に置いていたスクールバッグの中から、例の恋愛小説を取り出した。
そして、背表紙を確認する。
……やっぱり、そうだ。