今夜、色のない君と。
《1967年生まれ 52歳の既婚者
夫と息子の3人暮らしだったが、夫が5年前に亡くなって以来、息子と2人暮らし》
秋野さんは、メモ帳にこんな風にメモしている。
まだもうちょっと細かいことも書いてあったが、この位で十分と考えたのだろう。
秋野さんはメモ帳を閉じて、花夜に言った。
「花夜ちゃん、この世界に来た時のこと、詳しく話してもらえないかい?」
え……それってまさか…
「秋野さん、もしかしてとことん調べるつもりですか?」
「そうだよ。ただ単に僕が興味あるっていうのもそうだけど、きっと花夜ちゃんはこのままじゃ心細いんじゃないかな。自分がなんでこの世界に来たのか、その理由を知りたいんじゃない?」
「…そうなの?」
花夜を見ると、図星だとでもいうように俯いた。
え、ちょっと待ってよ。
「…花夜、なんで僕に言ってくれなかったの。花夜がそういう風に本気で思ってるんなら、どんな手を使ってでも僕だけだって調べたよ」
花夜を責めてるつもりじゃないし、花夜がその理由を知りたいと思ってるんじゃないかと薄々思ってた。
だけどそれは、単なる花夜の興味であって、本気なわけじゃないと、そう思っていたから……。