今夜、色のない君と。



「たしかに花夜ちゃんはここから一定以上の移動はできない。しかもその距離はかなり狭い」


「そうですよ。だから花夜は……」


「だけどさ緒都くん、今現実に起こっていることと、この小説の中で起こる出来事は、全て同じなんだよ」



それもさっきわかったことだ。


偶然にしては出来すぎてる。


何かあるはず……だけどその何かがわからない。



「実はこの小説、最初から最後まで読んでもらったらわかるんだけど、けっこう色んなことが書かれてるんだよねぇ」


「…どういうことですか…?」


「たとえばここ」



そう言って秋野さんは、持っていた小説のあるページを開いて、指をさしながら僕らに見せた。



「“それでも私は、全身を日光から隠さなければお出かけすらできない彼を、これまで以上に、愛おしいと思った”っていう主人公の心の中で書かれてるこれ。たぶんすごくヒントになるよ」



ヒント…。


たしかに引っかかる。



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