今夜、色のない君と。
「このシーンはね、主人公と、絵の中から出てきた男のコが一緒に水族館へ出かけるシーンなんだ。おかしいと思わないかい?」
「あ……」
確かにおかしい…!
もしその男のコと花夜が同じなら、すぐそこの公園ならまだしも、どこかへ“出かける”程のことなんてできるはずがない。
秋野さんは僕が考えていることを察したのか、今まで見たことがないような不気味さで、ニヤリと笑った。
あれ…。
たしか秋野さんって…。
「そして、さっき言ったところでは、“日光から隠さなければお出かけすらできない”と書いてあるんだ。……今までのこの小説と現実との関係を考えると、できると思わないかい?」
この人、僕より推理小説のファンだった…。
まさか、こんなことがわかるなんて…。