今夜、色のない君と。



「緒都くん、この小説の中での“絵の中から出てきた人物”が、自由に移動できる条件としては、身体が陽の光……つまり日光に当たらないことだ。出発地点から外に出たときに、一度たりともね。もしこの条件が花夜ちゃんにも通じるとしたら……きっとこれはあることが断定できる」


「……何がですか…?」


「これはね、きっと“絵の中から出てきた人物”の……ガイドブックだよ」



……ガイドブック…!?



「僕はね緒都くん。偶然が重なるときは、何か思惑があると思ってるんだ。偶然なんて、そう簡単に重なるものじゃないからね。もし思惑なしに偶然が重なったとしたら、それを奇跡と呼ぶんだ」


「じゃあ…もしかしてこれは……」



僕が今思ったことを、秋野さんは察したらしい。



「そうだよ。その奇跡すら、重なることは滅多にない。花夜ちゃんがこの世界に来たこと自体が奇跡に近いのに、たまたま売っていた小説の内容と現実の出来事がまったく同じなんて奇跡が起こるはずがない。つまりこれは……思惑が絡んでる」



誰の…?


誰の思惑…?などと問う必要も無い。


こんなことができるのなんて、一人しかいない。



「小説の作者“古川 美代子”。彼女が実体験したことが全てこの小説に書かれてる。………つまりこの小説は、ノンフィクション…?」



そんな……僕と同じ体験をした人が他にもいたなんて…。



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