今夜、色のない君と。
「…秋風 花夜(あきかぜ かや)」
疑問に思ったが、とりあえず質問に答える。
「……秋風…花夜…?」
「…?……どうしたんですか」
「いや、なんでもない」
秋野さんはどこか悩む顔をしながら、首を捻っている。
「なんでもない人の態度じゃないですよ」
「いや、秋風 花夜って、どっかで聞いたことがあるなぁと思ってね」
「え……なんですかそれ。どこで聞いたんですか」
どこで聞いたかなんて僕には関係ないのに、それを聞けば、今僕が悩んでることが解決すると、
なんとなくそう思った。
「…ごめん。勘違いだったかも」
だが、僕の期待にはそう易々と応えてくれない。