今夜、色のない君と。
***
「へぇ。ここが……なんだっけ。文具堂?」
「文聖堂」
放課後、僕と光世は約束どおり文聖堂にやってきた。
改装された駅から出て、静かな大通りを抜け、小さな細道にある元商店街の一番奥にひっそりと佇む文聖堂。
それを見た瞬間、光世はわかりやすくビックリしていた。
僕がいつも光世に教えていた文聖堂のイメージは、一言で言うと“オシャレ”で、
今僕たちが眺めている店の外観は、“古びた空き家”にしか見えないんだから。
「……これは、何か不思議なことが起こりそうだな」
「ちょっと悪口も含んで言ってるよね?」
「この建物を見てどこをどう褒めろっていうんだよ」