今夜、色のない君と。


「行けないって…どういうこと?」



僕がそう聞くと、花夜は少し苦笑いしながら言った。



「私は、自分が出てきた絵から遠い場所には行けない。わかるんだ。ここに来ただけでさっきよりも体がだるくなってるの」


「そんな……たったこの距離で?」



静かに頷いた花夜は、ムリをして笑っているように見える。



「私は人間じゃない。緒都くんみたいに好きなとこへも行けないし、何も知らない。不思議じゃないでしょ?遠くへ行けないなんて」



不思議じゃない……なんて、そんなのわからない。



だけどこっちの世界に出てきた花夜にこんな制限があるんだとしたら、


他にもできないことや、やってはダメなことがあるのかもしれない。



< 97 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop