今夜、色のない君と。
「緒都くん、私は大丈夫だから。また明日ね」
「花夜、夏でも夜は少し肌寒いかもよ?」
「私、寒さとか感じられないから」
「……虫とかいっぱい出るかも」
「あ、“虫”って図鑑で見たやつ?何それ面白そう。本物いるんだ」
……そこまで言われちゃあ何も言い返せないんだけど。
とにかく今日は何が何でもここにいたいみたいだし。
ここが売地だったとしてもこんなボロいところ誰かがすぐに買うわけでもないだろう。
───はぁ。
「…じゃあ花夜、また明日ね…?」
「うん。待ってる」
背中に花夜の気配を感じながら、僕は家に帰った。