先生と17歳のあいだ
スタートの時は僅差だったのに、先生はいつの間にか陸上部の顧問に差をつけてゴールテープを切った。
順位は文句なしの一位。
ゴールした先生と目が合った。
額に浮かぶ汗をTシャツで脱ぐって、ニヤリと得意げな顔をしてみせる。
……あんな紐がゆるゆるのスニーカーで一位を取るなんて、ありえない。
でも、私は知っていた。信じていた、というよりは、先生がゴールテープを切る姿しか想像できなかったから。
まだ熱気が冷めきらないグラウンドで、次は私の番。
退場してきた先生は、なにも言わなかった。
頑張れ、と言えば私がプレッシャーに感じる。だから先生はただ優しく私の背中を押すだけ。
私にはそれが最大のエールのように思えた。