先生と17歳のあいだ
「ハア……ッ、的井さん、よろしく……っ!」
城田さんにそう言われたあと、私はしっかりとみんなが繋いできたバトンを受け取った。
三位の黄色組とはほぼ同時で、肩がぶつかりそうになるほど距離も近かった。
走り出して数メートル。一位だった青組の選手が前方で転んでいた。
形成逆転。赤組と黄色組の一騎討ち。
たぶん、隣の選手は直線だったら絶対に敵わないほど足の速い人だった。
こういうのなんて言うんだっけ?
火事場の底力?
足がどんどん回転していく。
視界に映る景色が速い。
――『お前は出来ることを避けてるだけで本当はすげえポテンシャルの持ち主なんじゃねえかって思ってるよ』
ポテンシャルなんて、限りなく低い。
でも、まだあった。私にも。
負けたくないって思える気持ち。
一生懸命になるって、カッコ悪いと思ってたよ。
そんなの意味ないって。
だけど、違った。間違ってた。
「的井ー!!」
たくさんの声の中で、先生の声だけが耳に聞こえた。
誰も私のことなんて見てくれなかったけど、先生が見つけてくれた。
先生だけが、認めてくれた。だから私は……。
「……あっ」
私は地面に落ちていた石に勢いよく躓(つまず)いた。