先生と17歳のあいだ
あの体育祭で私は少しだけ変わった。
ちょっとだけ自分に自信が持てるようになったこと。
一生懸命になにかをするって気持ちがいいってこと。
あと、城田さんと友達になったことだ。
打ち上げのあとから頻繁に連絡も取るようになって、夏休みに入ってからもほぼ毎日メールをしている。
先生の思惑通りになっていることは正直悔しい部分もあるけれど、もちろん感謝もしていた。
だって先生と友達にならなければ、先生がリレーの選抜を仕組まなければ、私はとても暗い夏休みを迎えていたと思うから。
「元気そうですね」
私はそのあと本来の目的であるカメを見せてもらった。
水槽はリビングの白い棚の上に置かれていた。
ブクブクと泡が出ているフィルターに、水中を漂う水草。カメは岩の上にいて、しっかりと円らな瞳と目が合った。
「彼女探しはどうなったんですか?」
水槽のカメはまだ一匹のままだった。
「カメ専門の店とか知ってるんだけど、残念なことにお盆まで補習がびっしりなんだよ」
先生はそう言ってため息をはいた。