先生と17歳のあいだ
「はい?」
軽い口調で振り向くと、先生が何故かため息をついていた。
「お前さ、どうやってそこから出るの?」
「え、あ、あれ?」
窓際までモップを滑らせてきたのはいいけれど、気づけば右も左もワックスだらけで私は八方塞がりになっていた。
「計画的に塗れよ」
「そ、そのつもりだったんですけど……」
待って。本当にどうしよう。
背後にある窓は開いているけれど、ここは三階なので外には出られない。かと言って乾くまで一時間もここに立っているのはツラい。
楽しく作業していた気持ちはどこへやら。私は一気にテンションが落ちてひとりでおろおろとしていた。
「分かった。とりあえずモップと付けてるゴム手袋こっちに渡して」
なにが分かったのだろうと疑問に思いながらも、私は持ち手の部分にゴム手袋を引っ掻けてモップを先生に渡した。
手元にはなにもなくなり、あるのは足元に残っているワックス掛けをする前の床だけ。
「じゃあ、的井。跳べ」
「……へ?」
思わず間抜けな声が出てしまった。