先生と17歳のあいだ
たぶん、私はお母さんやお父さんに対してもまだ期待している。
昔みたいに三人でダイニングテーブルを囲んでご飯を食べられる日がくるんじゃないか、と。
テレビを見ながら同じ場面で笑って、週末の予定を立てたりして。そんな幸せだった頃の記憶が濃いせいで、私はまだどこかで執着しているのだと思う。
両親はとっくに手離しているというのに。
しがみつこうとしてるのは、私だけ。
「……的井さん?」
逆上せそうなくらいジリジリとしてる道の途中で、誰かに声をかけられた。
「……え、わ、和谷先輩?」
疑問形だった理由はふたつ。
私服姿の先輩に初めて会ったことと、先輩が髪の毛を切っていたから。
元々ナチュラルヘアで短かったけれど、さらにさっぱりとした印象になっていて、精悍な顔立ちによく似合っていた。
「偶然だね。買い物?」
「は、はい。晩ごはんの買い出しに」
「そっか。俺は図書館に寄ってきた帰りなんだ」
このあとは友達の家に行くそうで、私たちは途中まで一緒に歩くことになった。