先生と17歳のあいだ




「袋、重そうだね。持つよ」


「え、い、いえ。大丈夫です。自分のものなので」


「いいから、貸して」



先輩はそう言って、私の買い物袋を持ってくれた。



先輩は本当に紳士的で優しい人。


……こんな時、先生ならどうするかな。

なんかじゃんけんで決めようとか言いそう。


それで私が負けてバカにするように笑っても「あとでなにか奢れよ」って理由をつけて持ってくれる。……って、私はなにをひとりで妄想してるんだろう。


頭の中は嫌になるくらい、先生のことばかりだ。




「なんか元気ないね」


浮かない表情の私を見て先輩が気にかけてくれた。



「そ、そんなこと……ないですよ」


私は歯切れ悪く答える。


今まで先生に対してモヤモヤすることはあっても、私はしっかりと平常心でいられた。


でも、今は自信がない。



アクシデントだったとはいえ、先生の胸に飛び込んで抱きしめられて、力強く背中に手を回された時、私は私じゃなくなった。



なんて表現したらいいのか分からないけれど、こんなに余裕がない自分は初めてだ。

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