先生と17歳のあいだ
「進路はもう決めてるんですか?」
「大体はね。この前受験しようとしてる大学の説明会に行ってきたよ」
……進路、か。ただでさえ大人っぽい先輩がずいぶんと年上の人に見える。
私も来年は三年生だし、そろそろ将来のことを考えなくちゃいけないけれど、今はまだ進路なんて他人事のように思えてしまう。
「あのふたりかなり遠くに行っちゃったね。俺たちも急ごうか」
先輩はなんの躊躇いもなく、再び私に手を差し出した。
子供じゃないしひとりで歩けるけど、私も何故か先輩の手を握ることに抵抗はなかった。
水の流れに逆らいながら先輩は優しく私を引っ張る。
きゃーきゃーと近くで同い年くらいの人たちがはしゃいでいて、スイカの形をしたビーチボールが私の頭上で跳ねていた。
楽しいだけの空間に、自分がいる。
新しい水着を着て、誰からも慕われている和谷先輩とこうしてプールの中で手を繋いでいるなんて、少し前までは考えられなかった。
――『的井って、落ちてるものすぐに見つけられそうだよな』
嫌味ったらしく先生にそう言われた頃に比べたら、私はすごく進歩してると思う。
こうやって心が少しでも満たされれば……先生への葛藤も消えてくれるだろうか。