先生と17歳のあいだ




「今日が初対面なんて思えないですよね」


バスの車内で色々と聞いてみよう。



「ねえ、的井さん」


すると、再び先輩は小声で問いかけてきた。




「また一緒に遊びにこよう」


「え、あ、はい。じゃあ、菜穂にまた聞いて……」


「じゃなくて、今度はふたりがいいんだけど」



……え?

その言葉に私の思考は停止する。



「ごめん、急に。でも俺、前から的井さんのこと気になってるんだ」



ドクン、と心臓が大きく跳ねた。


聞き間違いかと思って必死に冷静になろうとしても、先輩の顔はこっちが恥ずかしくなるくらい真っ赤だった。




「だから考えておいて」


……なにを?

ふたりで遊びにいくことを?それとも……。



心臓の鼓動が鳴り止まない中で、私たちが乗るバスが目の前に停車した。

先輩はそれ以上のことはなにも言わずに、私も乗り遅れないようにバスに乗る。



菜穂と一番後ろの座席へと座り、窓際の私は窓越しで先輩と目が合う。



口パクで〝またね〟と言われて、今度は私の顔のほうが熱くなった。



人からこんな風に好意を持たれたのは初めてでどうしたらいいのか分からない。


でも、先輩が真剣に言ってくれたことは素直に嬉しくて。


バスの中で菜穂にあれこれと聞く予定だったのに、私はずっと先輩の顔ばかりを頭に浮かべていた。


< 169 / 334 >

この作品をシェア

pagetop