先生と17歳のあいだ




「見てもいいよ。これボツなやつだから」


先生がからかうようにして本当にテストを机の上に置いたので、私はすぐに重ねるようにして数学のノートを提出した。



「すいません。忘れてました」


淡々とした私の態度に先生はつまらなそうな顔をして、そのまま椅子に寄りかかる。

肘置きも付いている椅子はとても快適そうで、先生の動きに合わせてしなやかに回転していた。

 

「普段は鍵かけてるんだよ。じゃないとあいつら用もないのに押し掛けてくるから」
 

そう言って遅れて提出したことも怒らずに先生はノートを受け取る。



あいつらとは、先生のことを慕っている生徒たちのことだろう。

たしかに廊下を歩いているだけで群がられているくらいだから、ここを出入り自由にしたら大変なことになりそうだ。



数学準備室の雰囲気は、私が想像していたものとは違った。

先生のことだから服装みたいにカラフルにしてると思ったのに全然そんなことはなくて、むしろちゃんと仕事をしてる場所なんだって分かる。


タバコの匂いは一切しないし、香っているのはブラックコーヒーの匂いだけ。



落ち着くなんて言い方はおかしいかもしれないけど、ここが学校だと忘れるぐらい静かな部屋だと思った。 


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