先生と17歳のあいだ
「餌はなにを食べるんですか……?」
普段は口数の少ない私も愛らしいカメにどんどん興味が湧いてくる。
「固形の餌。貝とかエビとか魚とか。あげてみる?」
そう言って先生はプラスチックのケースから箸と乾燥しているエビを用意した。
「……わ、私、生き物に餌とかあげたことないです」
「簡単だよ。ちょっと箸掴んでみて」
言われるがまま箸を持つと、なぜか先生は私の背後に回って一緒に手を伸ばす。
かなりの至近距離。先生の身体と私の背中がぴったりとくっついていて、不自然に心臓が速くなった。
「ほら、見て」
先生はそんな私なんてお構い無しに同じ箸を掴み、カメの口にエビを近づける。
ゆっくりと水面から浮上してきたカメは首を伸ばして、小さくエビを食べ始めた。
「一生懸命でけっこう癒されるだろ?」
たしかに、食べる姿は可愛かった。
けれど、重なっている先生の手と密着している身体がとても熱くて恥ずかしくて今はカメを観察する余裕はない。