先生と17歳のあいだ
先輩はたまたまここに来たという雰囲気ではなく、私たちの姿を見て少しだけ険しい顔になった。
「的井さん、菜穂ちゃんが探してたよ」
「え、あ……」
私はすぐにスマホの画面を確認する。たしかに菜穂からの不在着信が二件表示されていた。
もしかして、わざわざ探しに来てくれたのかな。でもどうしてこの場所が……。
「的井さんがこっちに歩いていくのを見たって人がいて、それでここに。まあ、本当にいるなんて思ってなかったからビックリしたけど」
先輩は私が尋ねる前に教えてくれた。
先輩の視線はすぐに私から先生に移り、まだ火がついているタバコは隠しようがないほど目立っていた。
「郁巳先生、学校は全面禁煙ですよ。こんな場所で吸ってるなんてバレたらどうなるか分かってますか?」
それを聞いた先生は静かにタバコを灰皿へと押し付けた。
もし先輩がタバコのことを風紀の顧問に報告したら、間違いなく先生は怒られる。そしたらこの非常階段だって、出入り禁止になってしまうかもしれない。
「せ、先輩。タバコのこと今回だけは見逃してくれませんか?私から注意しておくのでお願いします」
私が頭を下げると、先生は後ろからそっと肩を叩いてきた。