先生と17歳のあいだ




「この前の俺、ちょっと怖かったよね」


校舎を出て帰り道。先輩は私の歩幅に合わせるようにしてゆっくり歩いてくれていた。



「……この前?」

「文化祭の時。急に的井さんを責め立てるような言い方をしちゃったなって、すごい反省してる」

「そ、そんなことは……」



先輩は先生のタバコのことを誰にも報告していない。

見逃したというよりは、私の気持ちのことを考えて言わないという選択をしてくれたのだと思う。



「あの時、俺はじめて頭がカッとなったんだよね。郁巳先生と的井さんが並んでる後ろ姿を見て、焦ったんだと思う」


「………」


「でも俺にしてって言った気持ちに嘘はないから。それだけは信じてくれる?」



弱々しい先輩を見て、私は全力で首を縦に振った。


菜穂が言ったように、恋愛にも刷り込みという効果があるのだとしたら……なにも知らないままの先輩を拒絶することなんてできない。
 

だから、知ってみようと。

知って、向き合って、それで自分の気持ちに答えを出そうと思った。



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