先生と17歳のあいだ




「先輩はこれから図書館に行くんですか?」

「うん。一緒にテスト勉強する?」

「私、静かな場所だとなぜか集中できなくて……」

「え、逆じゃない?いつも勉強してる時はどうやってるの?」

「音楽かけてます。けっこう大きな音で」

「えーそうなんだ。好きなアーティストとかいる?」



先輩との会話は途切れることなく続いた。

先輩が質問してくれたことを私がまたし返して、ひとつひとつ知っていることを増やしていった。


そんな中で、ふと横断歩道の前で止まっていた男女が目に入った。



「ねえ、私、雑誌に載ってたホテルのランチが食べたいな」


女性は甘えるような口調で、隣の男性の腕へと手を絡ませている。



「はは、いいよ。マキの言うことならなんでも聞いてあげる」


「えーそんなこと言って全然奥さんと別れてくれないじゃん」


「大丈夫。ちゃんとするからもう少し待っててよ」


私は思わず倒れそうになる衝動を必死で押さえていた。


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