先生と17歳のあいだ
なにそれ、なんなの。
先生は教師でしょ?
普通は友達になりたいじゃなくて、友達を作れって指導する立場でしょ?
本当に調子が狂う。
私は外の景色をぼんやりと見てるだけの自分でよかった。
失敗したくない。笑われたくない。
自分の思ってることを言葉にするのは難しいから、言葉にはしないという選択をしてきた。
なのに、私が人を求めているヤツだとか、俺が友達になりたいとか、なんで簡単にそんなことを言うの?
なんで、誰かに言ってほしかったことを……先生が言うの?
急に涙が出そうになって、私は慌てて背を向ける。
「もうチャイムが鳴るので、失礼します」
私は逃げるようにしてドアノブに手をかけた。
「的井。昼休みにどこ集合だっけ?」
先生の意地悪な声が背後で響く。
もしかしたら、先生と友達になったことを後悔する日がくるかもしれない。
やっぱり近づかなきゃよかったって、苦しくなる日がくるかもしれない。それでも私は……。
「非常階段、でしょ?」
充血した目で振り向くと、先生は満足そうに笑ってた。
郁巳雅人先生。あだ名はいくみん。
掴みどころがなくて全然教師らしくないこの人に賭けてみよう。
私の世界が広がる、第一歩。
いつか先生のように七色になれる日がくることを信じて。