先生と17歳のあいだ




「けっこう気持ちよく昨日は飲んだけど、マジで一気に酔いが覚めたよ」


その言葉にチクリとする。



「……嫌だったってことですか?」


「ここはアメリカじゃねえ。気軽にああいうことはするな」


「……挨拶でしたわけじゃないです……」



たしかに勢いだったし、今まで蓄積されていたものが爆発してしまったことは否定しない。

でも軽い気持ちだったわけじゃない。




「挨拶でしたってことにしてやるよ」


「わ、私は……」


と、その時。先生がとても難しそうな表情をした。



これはダメという合図だ。


ここから先は越えてはいけない。

これ以上近づいたらきっと先生は、私に一線を引くだろう。



忘れてくださいと言ったのは私。

覚えてなければいいと、覚えていたらどうしようと昨日からずっとジタバタしてた。


でも、でも……。



「分かりました。教室に戻ります」


物わかりがいいフリをすると先生は「うん」とだけ返して、そのまま職員室があるほうへと行ってしまった。



よかったじゃないか。


不意討ちであんなことするヤツと友達でいられないなんて言われなくて。


もうふたりきりで会ったりするのはやめようって言われなくて。



よかった……?


よくない。ちっともよくない。



忘れてくださいと言ったけど、なかったことにされるなんて……。


ちょっと、だいぶ、立ち直れない。


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