先生と17歳のあいだ
「変な人が現れたら先生に連絡していいってことですか?」
「うん。ただしスマホを触りながら全力疾走な」
「けっこう難易度が高いですね」
「バカ。そういう時こそ若さを活かすんだよ」
先生と友達になってから、今日で二週間。
正直まだ違和感はあるし、先生のことを友達だと思えているのかどうかさえ分からない。
でもこの数日で知ったことがいくつかあって、先生は教師なのにすぐにバカって言う。たぶん悪意のないただの口癖。
あとお昼ご飯は食べない。タバコが昼食代わりなんだそうだ。
知れば知るほど未知数で、やっぱり次元が違う人だって実感するけれど、不思議なことに先生との会話は苦痛ではない。
面白いし返しに個性があるし、先生にこんな表現をしたら失礼だけど、すごく頭のいい人だと思う。
相手によって喋るスピードや間合いや波長を合わせている。
距離が近いように見えて実は俯瞰的に生徒たちのことを見てる先生が、とんでもない策士だということも最近は少しずつ分かってきた。
「もし今後、変な人に遭遇しなくても用があれば連絡してもいいんですか?」
そんな先生の戦略なんて私にはバレバレだけど、今は引っ掛かってるふりをしてみる。
「当たり前だろ。いつでも連絡しろ」
雑草だらけの裏庭に、ふわりと桜の香り。
表の桜並木とこの場所が風で繋がっているように、私たちも連絡先を交換してスマホの中でも繋がった。