先生と17歳のあいだ
先生の前では何故か緊張しない。たぶん自然体の接し方に対して防衛本能が働かないからだと思う。
けれどそれは先生限定の話。
「ねえ、的井さん」
ほら、クラスメイトに話しかけられただけで身体がビクッとなる。
教室では帰りのホームルームがすでに終わり放課後になっていた。今日は部活がない日なので生徒たちの帰る足は速くて、クラスメイトも数人しか残っていない。
「俺、具合悪いんだけど委員会任せてもいい?」
声をかけてきたのは、同じ風紀委員の男子だった。
委員会は男女でやることになっていて、この男の子も私と同様に他の人たちに無理やり押し付けられたことによって決まってしまった。
「いいでしょ?俺がいても役に立たないしさ」
定期的に行われている挨拶運動もあれこれと理由をつけて参加してないし、実質ずっと私がひとりで仕事をやっているような状態。
……私だって本当はやりたくない。
でも代わってくれる人はいないし、『具合悪いのなんて嘘でしょ?』と咎(とが)める勇気もない。
「おい、早く帰ろうぜ」
廊下では男の子の友達が待っていて、おそらくこの後どこかに遊びにいく予定なのだろう。
「じゃあ、よろしくね」
結局私はなにも言えないまま、ひとりで委員会に向かうことになった。