先生と17歳のあいだ
そこにはガラスの置物などが売られていて、その中に銀色の丸いものを発見した。
一瞬だけ、先生の灰皿かと思うほど形がよく似ていてなんだろうと私は手に取る。
重みのある表面には雪の結晶のような細かいデザインが施(ほどこ)されていて、唐突のあるボタンを押すと音もなくそれは開いて、なんと中は鏡になっていた。
……綺麗。
思わずうっとりしてしまうほどの繊細な造り。
工芸品なのか鏡はひとつしか売られていなかった。
そっと手鏡が置かれていた場所に貼ってあるプレートを確認すると、ビックリするぐらい高価な値段が書かれていた。
……欲しかったけど、これは予算外で買えないや。
「可愛いじゃん、それ」
急に声をかけられて身体がビクッとなったけれど、隣を見るとなぜかそこには郁巳先生が立っていた。
「先生もお土産ですか?」
「うん。と言っても酒ばっかりだけど」
たしかに先生のカゴの中にはたくさんのご当地ビールが入っていた。
「それ買わないの?」
先生がそう言って私が持っていた手鏡を指さす。
「見てただけです」
「でもちょっと欲しそうな顔してたじゃん」
「私にはちょっと高価すぎました」
「ふーん」
私は鏡をゆっくりと元の場所に戻した。名残惜しくならないように私は急いでお菓子だけを抱えてレジへと向かう。
混雑している列の中で菜穂とも合流することができて、なんとか無事にお土産を買うことができた。