先生と17歳のあいだ
「はい」
「ありがとうございます」
湯気が立つマグカップを受け取って、火傷しないように空気を含みながらコーヒーを一口飲む。
……やっぱり、ちょっと苦い。
でも、先生が作ってくれたから美味しい。
「やっぱりはえーな」
先生も同じようにしてマグカップを口に付ける。先生はもちろんミルクさえ入っていないブラックコーヒー。
「早いって、なにがですか?」
「んー、成長していくスピード」
そう言って、先生はまたコーヒーを飲んだ。
「なんか夏休み明けの女子が急に大人っぽくなってビビった学生時代のことを思い出したよ」
「なんですか、それ」
私はクスリと笑って返す。
数学準備室の窓から見えていた景色が、ずいぶんと冬らしくなってきた。
桜が散って新緑が芽吹いたように、新緑が赤く染まり枯れ葉になって寂しげな枝になっているように、私も少しずつ変わっている。
変わりたいと思ってる。
だからこうして背伸びをして上手にコーヒーを飲もうとしてるわけだけど。