先生と17歳のあいだ
*
「えー的井さん、引っ越すの?」
冬休みを経ての三学期。転入先も無事に決定して、私のことは郁巳先生からクラスメイトたちに伝えられた。
みんなはとても驚いていて、中には寂しがってくれてる人もいた。いてもいなくても分からないような存在だったあの頃からは考えられないことだ。
「……六花と学校に通えるのもあと少しなんだね」
隣で菜穂がぽつりと言う。
「大丈夫だよ。向こうにいったらバイトするつもりだし、お金貯めて菜穂に会いにくるから」
「うん。私も。絶対に北海道に遊びにいくからね」
遠く感じるけれど、そうでもない。
あの海で、あのフェリーを見せてくれた先生のおかげで、私はずいぶんと強くなれた気がする。
網走の学校に合格してから、身の回りの荷物は徐々におばあちゃん家へと送り、お母さんは私とふたりで住めるアパートを探しはじめた。
おじいちゃんたちは一緒に住めばいいと言っていたけれど、お母さんは頑(かたく)なに甘えたくはないと、実家で暮らすことを断った。
私も、そのほうがいいと思ってる。