先生と17歳のあいだ
転入学試験を受ける前。私はお母さんと長い時間話し合った。
私がお母さんに付いていくことを伝えた時。お母さんは泣いていた。
『今まで迷惑ばかりかけてごめん』
『これからはしっかりするから』
『六花の母親として、ちゃんとするから』
お母さんは何度も繰り返しそう言ってくれた。
お母さんに対して不信感を抱いたこともあったし、期待なんてしないと諦めていた時期もあった。
でも、私はまだひとりでは生きていけない。
お母さんが必要だし、私もお母さんにとって必要な存在でありたいと今は思ってる。
「的井さん」
廊下を歩いていると、階段近くで和谷先輩と鉢合わせた。もちろん先輩も私が引っ越すことを知っている。
先輩も私にとってとても大切な人だから、決意をしてから自分の口で先輩には伝えた。
「引っ越しの準備はどう?」
「まだ全然片付いてないです。先輩はもうすぐ大学受験ですよね」
「うん。来月の中旬」
三年生はすでに全科目の授業は終わっていて、今は受験のための追い込み作業中。
2月になればほとんどの三年生が学校には登校して来なくなり、推薦で決まった生徒や就職が内定した生徒は自宅待機になる。