先生と17歳のあいだ




「コーヒー飲む?」

「は、はい。でもあんまり飲み慣れてないです」

「じゃあ、ミルクと砂糖いっぱい入れるよ」


先生は壁に添うようにして置かれているテーブルへと向かう。そこにもまた色々な本が積まれていたけれど、真ん中にはコーヒーメーカーがあり、マグカップなども用意されていた。


先生は慣れた手つきでフィルターやコーヒー豆をセットして、機械のボタンを押す。


ゴゴゴッという音がしたあとに、じわじわとコーヒーが下のガラス容器に落ちていく。


準備室に漂うコーヒーの香り。

家でもお母さんとお父さんがコーヒーを飲むけれど、あまりいい匂いだと感じたことはなかった。

なのに、どうしてだろう。先生が作ってくれているというだけで、コーヒーの匂いが安心するものに変わっていく。



「先生はお弁当を作ってくれる彼女はいないんですか?」

気づくと私はそんなことを聞いていた。



「残念なことに俺のことが好きっていう子は料理下手ばっかりなんだよ」


先生はコーヒーメーカーを見つめたまま背中越しで言う。


今のは答えてくれたようで、彼女がいるのかどうか曖昧にされた気もする。

そういえばクラスメイトの女子たちもはぐらかされているようなことを言っていたっけ。



「ほら」


そんなことを考えている内にコーヒーが出来上がり、先生が湯気の立つマグカップを手渡してくれた。

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