先生と17歳のあいだ




「的井は恋愛してんの?」

「ゲホゲホッ……!」

先生が唐突にそんなことを聞いてくるから、コーヒーが気管に入ってしまった。


「大丈夫かよ」

先生は半分笑いながら、私の背中を擦ってくれている。



「な、なんですか、急に……」

「なにって普通の恋バナだろ」

「………」


先生が普段でも生徒たちとそういう話をしてることは知っていた。

先生は本当に友達みたいだから「お前誰と付き合ってんの?」とか「好きなのに告らないの?」とか躊躇なく聞いてくるらしいし、みんなも気軽に相談してる姿を目撃したことはある。


でも、だからって……私に聞く?



「してるわけないでしょ」

分かりきってることをわざわざ言わないでほしい。



「わけないって、なんでだよ」


「恋愛なんて違う星の人たちがするものだと思ってますから」


そもそもドラマでも映画でも小説でもラブストーリーは好まないし、どちらかといえば避けてるほう。


恋愛に関心がないから共感できないし感動もしない。

大半の女子たちが彼氏の話で盛り上がったりしてるけれど、つくづく私とは無縁のことだなって思ってる。


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