先生と17歳のあいだ
命を大切にできる人。
生き物の気持ちを分かろうとしてる人。
自分以外のものに優しくできる人。
それって、なんだか素敵な人。
「……先生は、彼女いるんですか?」
たぶん人生で同じ質問をしたのは、これが初めてかもしれない。
〝子供のお前には関係ない〟
しつこくすれば、そうやって心ごと拒絶されてしまう怖さを知っているから。
でも、今は聞きたいと思った。
はぐらかされても知りたいと思った。
「俺も可愛い彼女募集中」
先生ははっきりと答えてくれた。
モテる先生が誰とも付き合ってないなんて、すごく意外だ。
でも、もっと意外だったのは先生の答えを聞いて私は何故か少しホッとしていた。
なんでだろう。自分でもよく分からない。
「先生、コーヒーに変なものでも入れました?」
「なんでだよ」
ふわりと、準備室の窓から春の風が入ってくる。
暖かくて穏やかな昼休み。
チャイムがこのまま鳴らなければいいのに、なんて思ってることは先生には秘密だ。