先生と17歳のあいだ
「いつもひとりで食ってんの?」
「………」
どうしよう。先生とふたりきりなんて無理。
そう頭で思っても力が抜けたように私は立ち去ることもできなかった。
誰も来ないだろうと油断してたこともあるけれど、非常階段の扉は重いから必ず音がする。
でも、今はまったく気づかなかった。
おそらく扉の開閉に手こずるのは私に力がないせいで、先生にとっては音ひとつ立てないぐらい容易いことなのだろう。
「ねえ、吸っていい?」
「……え?」
「いや、吸うわ。我慢の限界」
そう言って先生はポケットからタバコを取り出した。そしてライターで火をつけると、ふわりと甘い煙の匂いが私の鼻をかすめていく。
ふう、と空に向かって先生は何度も煙を吐く。
細いタバコを持っているせいか先生の手がやけに大きく見えて、タバコをこんなに近くで吸われたのも、タバコを吸う男の人の横顔を見たのも初めてだった。