先生と17歳のあいだ
「教師らしいことを言ってやろうか」
先生はそんな私を見たあと、ポケットから水中時計のような丸型の携帯灰皿を取り出した。そして、そこに吸い終わったタバコを入れる。
「不都合ができて離れていくのは友達じゃねえ。なにがあっても離れていかないのが本当の友達だよ」
先生は珍しく真剣な顔だった。
本当に教科書に載っていそうなぐらい模範的な言葉。
「……言うのは簡単ですよ」
そう、言うだけなら私にもできる。
人を疑うということを覚えてしまうと、どんどん泥沼にはまっていって抜け出せなくなる。
もがけば、もがくほど、信じられないって気持ちが強くなる。
「……先生は……私の友達だから離れませんか?」
きっと風になびく髪の毛も気にせずに先生を見つめた私の瞳は弱かったと思う。
「俺はお前に同級生の友達もできたらいいなって思ってるよ」
先生は離れない、とは言わなかった。
それと同時に浮かんできたひとつの疑問。
「……まさかわざとリレーの二枠を残したんですか?」
初めからおかしいとは思ってた。
運動能力が高い人を次々と選抜に決めていくのに、リレーはなぜか後回しにしていたから。