先生と17歳のあいだ
郁巳先生は私と違ってすごくカラフルだ。
クリーム色のパーカーには緑色のロゴが付いていて、なぜか袖の上に黒い腕時計をしている。
さらに紺色のズボンと赤色のスニーカーを履き、髪の毛はサラサラとした薄茶色。そんな様々な色が主張し合ってるというのに、先生の肌は透き通るぐらい白い。
クリーム色。緑色。黒色。紺色。赤色。薄茶色。白色。
先生はいつも七色。
梅おにぎりの私とは真逆に、カラフルな混ぜご飯みたい。
「的井って、落ちてるものすぐに見つけられそうだよな」
先生が吐いた煙越しに目が合って、私は不自然にうつ向く。
昔、誰かに同じようなことを言われたことがある。
的井さんは蟻の観察をするのが趣味だって。
もちろん、そんなことは自分の口から言ったことはないし、どちらかといえば蟻は苦手なほう。
けれど先生が言ったことと、蟻の観察をしていると勘違いされたことは、遠回しいつも下ばかりを見ているという私への皮肉だということは分かっていた。
「あ、やっぱり煙い?」
私のムッとした表情を見て、先生がタバコを遠ざける。