先生と17歳のあいだ
「なんか今年から学校の敷地内が全面禁煙になったんだよ。吸えるとこねーし、車まで行くのめんどくせーし。それで唯一ここならバレないんじゃないかって思ってさ」
先生はそう言ってタバコを美味しそうに吸い終わった。
幼稚園、小学校、中学校と色々な先生がいたけれど、郁巳先生のようなタイプの人はいなかった。
「お前、友達いないの?」
そして唐突にデリケートなことを聞いてくるところが、口調や服装よりも最も教師らしくない部分だと思う。
「……いてもいなくても先生には関係ないです」
私は消えそうな声で答えた。
「関係あるだろ。俺担任だし」
「……気にしてくれなくて大丈夫です」
「それを気にかけるのも俺の仕事なんだよな。まあ、世話焼いても給料かわんねーけど」
本当に先生は掴みどころがない。
私のことを心配してくれてるのか。それとも仕事だから言ってるだけなのか。どっちにしても私は今の自分で満足してる。
乱されたくない。誰とも関わりたくない。私のことは放っておいてほしい。
「明日も昼休みはここ?」
「………」
私は返事をしなかった。
そろそろ先生とふたりきりでいることがツラくなってきた。うまく喋れない。喋り方もよく分からない。
すぐに挙動不審になって、やっぱり下を見ることしかできない私のことを、みんながおかしく思うのは当然のこと。
だから友達もいらない。
失敗して笑われるぐらいなら、最初からひとりでいたほうが楽だ。