溺甘系朧咲夜【完】
親戚をたらい回しにされて、龍生さんに引き取られて、龍生さんの実家のある天龍という土地で育って、全寮制の私立中学に入学するために上京して、在義さんと出逢って、咲桜と出逢って。
中学に入ってすぐ、自分の家の事件は解決した。
犯行は、当時高校生だった男四人による強盗殺人だった。
……自分の手で犯人を挙げて、何も、感じることがなかった。
そのときから俺は、自分に欠陥があると思うようになった。
人並みの『感覚』と『感情』が欠けているんじゃないか、と。
事件を追っているうちに、一つの可能性に気づいた。桃子さんの正体だ。
在義さんが保管していた桃子さんの遺品から検出されたDNAと、俺の毛髪と血液を検査にかけて、判明した。
桃子さんが記憶を失う前は、神宮美流子だったと。
戸籍上、俺と咲桜は、叔父と姪になってしまう、と。