溺甘系朧咲夜【完】


「そんなこと……」


私の声は、小さく消えた。


「……じゃあ斎月姫のこと、嫌いになった?」


そっと問うてくる降渡さんに、私は未だに騒ぎ続ける二人を見ながら答えた。


なんという小学生レベルな争い方。


「なれないと思います」


「即答だね」


「だって、斎月って流夜くんとそっくりだから。……嫌いになれるわけがないです」


流夜くんが斎月を男扱いしかしていないのはよくわかった。斎月も弟のノリだし。


男兄弟って言うか、一卵性双生児の男兄弟レベルに思える。


「好きな人が大事にしてる人だから、嫌いになれないです」


流夜くんは、本当に興味ないことはどうでもいい人。簡単に突き放せる人。


それなのに、斎月は弟とまで呼んで傍にいる。大事にしていないわけがない。


「……あの小学生レベルを見てそう言えるってさすがりゅうが惚れた子」


「でしょ? さっすが僕の咲桜だよね!」


「「お前のじゃねえ!」」


おおう、流夜くんと斎月の矛先が一気にこちらへ向いた。


地獄耳たちか。

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