溺甘系朧咲夜【完】


流夜くんが、カウンターの中にいる私たちの方を向いて来た。


「僕らには?」


「……お前らに何を謝れと?」


「そういうとこだよ。で? バカ姫のおかげで五月蠅い女は撃退出来て、咲桜の存在をカモフラージュ出来る偽モノ婚約者も出来たわけだ。あとは咲桜にすることだけ?」


ふゆちゃんがねちねちとした口調で流夜くんに詰め寄る。


「悪かった。助かったよ、吹雪と降渡の気転で。今度ちゃんと礼する」


「そうしてね。咲桜、もう自分から流夜のとこへ行ける?」


「うん、ありがと、ふゆちゃん、降渡さん」


自分から――。


……斎月を羨ましいと思ったのは、最初だけじゃない。弟だと呼ばれたときだけじゃない。流夜くんの傍にあることを認められていると知ったときだけじゃない。


斎月は、自分の足で流夜くんの隣に立っていたから、羨ましいと思ったんだ。

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